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痛いから歩けないのか?歩かないから痛いのか?2つの症例


10分歩くと足が痛くなる…
病院であまり歩かないようにと言われた…
歩くと悪化しそうな気がする…

出かける時はなるべく車か自転車を使い、歩く事は極力避けているけど、症状が良くなっていく気がしない。

そんなお悩みにお答えします。


あなたは足腰が痛む時、その痛みが回復するまで安静にするべきだと思いますか?


 近年、

「痛い時は安静にする」という考えから、

「痛くても通常通りに生活する」ことで痛みが早く改善することが分かってきました。

この記事の中で2つの症例をご紹介しつつ、「痛くても歩ける範囲で歩いたほうがいい」その理由を解説していきます。

さっそく、同時期に来院された70歳代と80歳代の女性の症例を見ながら考えていきたいと思います。

70歳代女性 腰から左足にかけての痛み


左腰、左殿部、左足の痛みが半年以上続いている患者さんです。

他の整骨院に通っていましたが良くならず、当院を訪れました。

痛い時はコルセットを使用して、無理をしないようにと指導されたそうです。

車で通院されるそうです。

体を動かしてもらったところ、動作による痛みは下記の通りです。

 ・体を反らしたり左に倒した時、左側に症状がでる

 ・左殿部の痛みで足がつけない時もある

 ・病院で脊柱管狭窄症と診断されている


 一般的に、脊柱管狭窄症の人は、腰を反らしたり長時間歩いたりすると症状が強くなると言われており、これらの動きを制限するように指導されることがあります。

初期の症状

今まで通院していたところでは、歩くことや腰を反らすことはしないように指導されています。

はたしてそれが正しいのでしょうか?


歩かず、腰を反らさないでいれば、その場の痛みは悪化しません。

しかし、これではやらない動きは苦手になっていきます。

これからの人生、歩いたり腰を反らさずに痛みを避けて生活することにもなりかねません。

そのうちに歩くことが不自由になって、自分一人では外出することもできなくなる可能性さえあります。


安静にするべきか?

この患者さんは左殿部から大腿の後面にかけての筋肉が、ガチガチに凝り固まっていました。

これほど筋肉が緊張していれば、血流が低下し栄養や酸素が組織に運ばれないため、痛みやしびれ、脱力が生じやすくなります。

つまり、脊柱管狭窄症による神経症状ではない可能性が高いです。

そこで、「痛みがあっても可能な範囲で歩いてみましょう」とアドバイスしました。

 3回目の来院からは片道20分の距離を歩いて来院されるようになり、そこからどんどん回復しています。

 画像検査で異常が見つかっても痛みの原因は痛い場所になく、他に要因が隠れていることがあります。


それでは、もう一つの症例を見ていきましょう。


80歳代女性の腰と両ふくらはぎの痛み


20年前、右変形性膝関節症のため関節内に注射をしたときに感染してしまい入院。

それから腰と両足の症状が悪化して歩く事も困難との事です。

家の中の事もほとんどをご主人がやっていて、通院する際も車で送ってもらっています。

初期の症状

  1. 痛くて歩けない(本人の訴え。室内は歩ける)
  2. 腰部脊柱管狭窄症と診断される
  3. 腰を伸ばせない(疲れてしまう)
  4. 屈むと痛い
  5. 両膝が曲がらない

「 とにかく歩くと痛いので歩けない。」

この患者さんの訴えについて、第三者的に冷静に分析してみました。

① : 痛くて歩けない…

ポイントは室内では歩けるというところです。

室内であれば、いつでも座れるところがあるので安心です。

一方で、「歩けない」という思い込みが強いため、痛みが出たときのことを考えてしまい、外を歩くのは不安なのです。

しかしながら、実際に歩いてみなければ本当に歩けないかは分かりません。

歩いてみたら案外歩けた、なんてこともあるかもしれないし、すぐに疲れたとしても、「痛くてもここまで歩けた」という自信を得ることができます。

頭の中の妄想だけで「歩けない」と決めつけてしまうのは、本当は歩くことができるかもしれないという可能性を放棄してしまうことにもなります。


② : 脊柱管狭窄症だから…

患者さんは、腰を伸ばすと疲れるので背中が丸まってしまうそうです。

そして、背中を伸ばしても痛みは伴わない。

 一般的な脊柱管狭窄症の症状は、背中を反らす、長時間歩くなどによって症状が悪化すると言われています。

一方で、痛くて前屈ができないという患者さんの症状は、脊柱管狭窄症の症状ではないと考えられます。


③ : 両膝が曲がらない…

数回通院して頂いた頃から、両膝が曲がるようになりました。

長年動かしてなかったため関節が硬くなっていただけで、関節内の問題ではなさそうです。

歩いて痛みが生じているのは両ふくらはぎでした。

ふくらはぎの痛みを、膝の痛みと思いこんでいたのも、やはり先入観です。

歩けるようになる可能性はある

上記の理由から、この患者さんのケースでは、手術しなくても症状を改善することができると考えています。

それには、このような歪んだ思い込みを修正し、最初は痛くても、少しずつ歩いてみることが大切です。

こうしたアドバイスをしてみましたが、

「でも痛いんです…」

という考えが先に立ち、行動に移すことができません。

それでも動くことをお勧めします

このまま歩かないと…

 痛いから歩かない 
           ↓
    筋肉の衰え
           ↓
     新たな痛み
           ↓
  本当に歩けなくなる


痛くてもできる範囲で歩くと…

痛くても歩く
      ↓
体が強くなる
      ↓
歩けるようになる
      ↓
痛みが軽減する
      ↓
    回復

 
歩くことによるメリットは、身体的なものだけではありません。


 運動することによって脳の働きが活性化し、

  • ドーパミン(幸福物質)
  • セロトニン(癒しの物質)
  • エンドルフィン(脳内麻薬)

といった脳内物質が分泌されやすくなります。


 それぞれに鎮痛作用があり、特にエンドルフィンはモルフィネの6、5倍の鎮痛作用があると言われています。

また、考えが前向きになり、やる気向上に関与する物質でもあります。

まとめ

同じ脊柱管狭窄症の診断をされている2人ですが、考え方や捉え方をプラスに変えていった患者さんは、早く痛みが改善しました。
 
痛みがなくなるまで待っていては、いつまでたっても歩けないままで痛みも良くなっていきません。

何よりも、行動しなければ今の人生を充実させる事はできないし、

痛くても歩くことによって自信がつき、身体の機能も戻ってきます。

動ける身体を取り戻した結果、痛みも軽くなっていくものです。

もし、長引く症状で動くことを避けている方がいたら、私は積極的に動くことをお勧めします。

身体を守りすぎて症状が悪化する前に…

 

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あおば秀樹🦴ほねつぎ院長

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