通常は痛みといえば「急性痛」を指します。
つまり身体のどこかが傷ついたり、病気になったりすると脳が感じる「痛い」という感覚です。
これは身体の異常を知らせる警告信号であり、傷や病気が治れば役目を終えて消えていきます。
一方「慢性痛」と呼ばれる痛みがあり、従来は急性痛が長引いた物とされてきましたが、急性痛とは全く別の痛みであることが分かってきました。
痛みの原因となったケガや病気が治った後も痛みが治まらなかったり、検査では異常が見つからないのに痛みが長期に渡るものを「慢性痛」といいます。
各種の感覚は、それぞれの感覚の感覚受容器が刺激を受けて活動(興奮)し、その信号が脳に伝わって生じます。
痛みの感覚についても同様に、痛みを専門に受け付ける神経系があることが分かりました。
つまり、「触られた」などのどんな感覚受容器であっても、刺激が大きすぎるからといってその刺激が「痛み」として知覚されることはありません。
痛みには、すねをぶつけた時にまず最初に感じる鋭い痛み(一次痛)と、少し遅れて起こるズーンとした鈍い痛み(ニ次痛)があります。
一次痛の受容器(高閾値機械受容器)は、物をつつくような機械的刺激が傷ができる程に強く加わった時にだけ反応します。
この受容器からの情報は、素早く大脳の感覚野に伝わり、一次痛を引き起こします。
ニ次痛の受容器(ポリモーダル受容器)は多くの様式の刺激、具体的には「機械的刺激、科学的刺激、熱刺激」のどれにでも反応する感覚受容器です。
認識性が低い、どの部分が痛いのかあまりはっきりしないようなニ次痛は「ポリモーダル受容器」で感じられます。
通常なら、痛みの刺激がなくなれば痛覚受容器の興奮もなくなり、元に戻って痛みはなくなります。
しかし強い痛みが長く続いたり、神経そのものが傷ついてしまったりすると、痛み系が元に戻らなくなる場合があります。
痛み系がゆがむと、他の神経との間に正常時にはない連絡が出来てしまうことがあります。
すると、何かに触れたという信号が、脳に行くまでの間に痛みの経路に乗り換えてしまい、痛みとして脳に伝わってしまうこともあります。
寒かったり、感情や記憶によっても痛みが引き起こされるなど、痛みに対して過敏になってしまいます。
ゴムボールを指で押しても、指を離すと元に戻ります。
しかし、粘土を指で押して離しても、指の形に凹んだまま元に戻りません。
このように粘土のような変化した形を残してしまう性質を「可塑性」といい、脳における「記憶」も可塑性によるものです。
最近は、「痛み」による刺激が長く続くと神経回路が元に戻らない変化をとげてしまい、痛み系そのものが歪んでしまうことがわかりました。
こうなると、他の神経系との間に正常ではないネットワークができ、本来なら痛みとは感じない軽度な刺激の信号が、脳に行くまでの間に痛みの経路に乗り替わってしまいます。
そうすると、軽度の刺激、感情や記憶によっても痛みが引き起こされる場合があります。
人類を含め、あらゆる動物は、条件に反応する性質を持っています。
パブロフの犬をご存知でしょうか?
パブロフは、研究室で複数の犬に餌を与える時、必ずベルを鳴らしました。
2、3度繰り返すと、餌を見せずにベルを鳴らすだけで犬が唾液を出すことがわかりました。
この犬達は、ベルの音で身体が反応するように条件付けられたのです。
腰痛患者が、「イスに座ると痛くなる」、「運転すると痛くなる」、「靴下を履くとき痛い」、これらは条件付けによる反応とも考えられます。
前屈して手が床につく人が、靴下を履くときにだけ必ず腰が痛くなるといったケースがあります。
これは、靴下を履くとき腰が痛くなった経験のある人が、「靴下を履く=腰痛」という条件付けがされてしまい、本来なら何でもない靴下を履く動作で痛みが生じている事が考えられます。
( 参考文献 サーノ博士のヒーリング・バックペイン)
人が痛みを感じているときには、脳の中の大脳辺縁系が活動します。
大脳辺縁系は本能や感情に大きく関係した部位であり、人が痛みを感じるときには同時に不安や恐怖といった精神的苦痛も感じているということです。
ただ痛いだけなら我慢できるような症状でも、「痛いな、大丈夫かな、怖いな」といった精神的苦痛が伴う場合にはどんどん辛くなっていき、耐えられない状態になっていきます。
こういった状態のときにはどんどん悪い方向に考えてしまいます。
昔の事故やケガ、医師にいわれた骨の変形のことなど余計なことまで思い出してしまい、どんどん不安が強くなることがあります。
そうすると痛みのことが常に気になってしまい大脳辺縁系はもっと興奮を強め、痛みがどんどん増してしまいます。
痛みを恐れたり心配しすぎるとその感情とともに痛みも強くなってしまうのです。
(参考文献 柿木 隆介 著 どうでもいいことで悩まない技術)
慢性痛の予防には運動がいいと言われています。
人間も動物である以上、動かないでいること、動かさないでいることは身体にとって悪影響を与えます。
運動器の痛みは慢性痛症とも深く関係しています。
皮膚の神経の刺激で起きた興奮は刺激後すぐに治まってしまうのに対し、筋肉の神経を刺激すると興奮が長続きします。
つまり同程度の痛みでも筋肉の痛みは慢性痛症に結びつきやすいと考えられます。
「痛みがあるときは安静にする」と皆さん思いがちです。
しかし、痛いからといって動かさないと、筋肉が衰えてしまい力が入らなくなってきます。筋力が低下すると次第に関節も動かしにくくなり、関節を動かそうとするだけで痛みを生じます。
痛いから動かさない、動かさないから悪化するといった悪循環におちいります。
急性痛と慢性痛では痛みの仕組みがちがうため、同じ治療や薬では効果がないことがあります。
急性期には安静を要しても、時期を見て動かしていかないと痛みを長引かせ慢性化の原因になることもあります。
ぎっくり腰では、急性期であっても動ける範囲で動くように推奨されています。
痛みの仕組みを理解して、痛みを早期に取り去ることが慢性化させないために重要となります。
(参考文献 熊澤 孝朗著 痛みを知る)
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