痛みを減らす運動の効果

 膝の痛みでお悩みの60歳代女性。

 大腿四頭筋下部と鵞足部に痛みがあります。


 痛みで足を引きずってしまうので、タクシーで行こうか迷っていると電話をしてから来院することが目立ってきました。


 調子のいい時は、当院まで歩いて5分で到着するくらいの場所にお住まいなので、歩けそうなら休みながらでも歩いて来るようにお話しています。


 来る時にはタクシーを使っても帰りは歩いて戻られるので、頑張れば歩けるほどの痛みなのではないかと思われます。


 慢性痛患者は、外からは見えない痛みを他者に分かってもらえるように、足を引きずる、じっと寝ている、仕事を休むなどの疼痛行動をとることがあります。

 
 このような患者さんに向けてプリントを作ってみました。


痛くても動ける範囲で動く人は、早く回復します。


 動くことで身体の機能低下を防ぎ、痛くても動けるという自信にもなります。

 脳は活性化し、鎮痛作用のあるホルモンが放出されて、気持ちが穏やかになりやる気もおきます。


安静にしずぎると痛みの悪循環が続きます

 原因のはっきりしない慢性痛は、痛い場所は良くなっているのに痛みがなくならないため、痛みのとらえ方(認知)が変化し、それに伴い不安や恐怖感(情動)も強くなります。


 「痛みが完全になくならなければ行動できない」「動くと痛みが悪化するに違いない」といった強い思い込み(認知のゆがみ)から行動を制限し、身体機能の低下や気分の落ち込みが生じ、更に痛みが強く感じられるという悪循環におちいるケースが多いようです。


 長引く痛みは脳の働きにも影響を与え、脳内物質(ホルモン)の分泌がうまくいかなくなります。


  • ドーパミン → 幸福物質(幸福感、快感)
  • セロトニン → 癒しの物質 (落ちつき、平常心)
  • エンドルフィン → 脳内物質(強い鎮痛作用)


 こういった脳内物質の分泌が少なすぎると、同じ痛みを強く感じたり物事をマイナスに捉えて落ち込んだりします。


受け身の治療から自分で治す考えへ

 痛い時に動いていいのか安静にするべきか迷ってしまいますが、その選択によって予後は大きく違ってきます。

 
 安静によって何らかの利益が認められた研究は1つもありません。


 手術を必要とするような重大疾患を除いては、日常生活を通常通り過ごすのがよいとされています。


 一度に全部を解決しようとせず、できることから始めて少しの達成感を積み重ねることで、長引く痛みの解消につながっていきます。