大竹まことさんの腰痛について考える

私は若い頃からラジオが好きでよく聞いています。


最近、午後の番組でお気に入りなのが、文化放送「大竹まことのゴールデンラジオ」なのですが、現在メインパーソナリティである大竹まことさんが、激しい腰痛でダウンされています。


腰痛を発症してから10日を過ぎても良くならず、番組をお休みし自宅で安静にされているようで、ラジオから声を聞けない日が続き残念です。


先日の放送の中で、大竹さんの診断名が「腰椎分離症」であると太田アナがお話されていました。
この傷病名を踏まえて、ゴールデンラジオのいちファンであり腰痛の専門家である私の見解を書いてみようと思います。


腰椎分離症が痛いのか?

まず、検査で分かった傷病名「腰椎分離症」について考えてみます。


腰椎分離症とは、腰椎(背骨の腰部分)の疲労骨折のことをいいます。
10歳〜15歳頃のスポーツ選手に多く発生し、急性期では強い腰痛を伴うことがあるため、コルセットによる安静が必要とされることもあります。


腰椎分離症が発症するのは比較的若い時期ですから、大竹さんの分離症はもともと若い頃から存在していたのかもしれません。今回腰痛になったのをきっかけに画像検査をして、もともとあった変形が今になって見つかった可能性があります。


研究によると、健康診断群と腰痛持ちの人を比較しても、脊椎分離症の検出率に違いはありません。
つまり、脊椎分離症と腰痛の間に相関関係はなく、こうした事実からも脊椎分離症が痛みの原因とは必ずしも言えないことが分かります。

骨や軟骨の構造異常が痛みの原因とは限らないため、「腰椎分離症=痛み」と決めつけて余計な不安を持たないことが大切です。


腰痛で安静は正しいのか?

大竹さんは、腰痛を発症した時に仕事が休みだったため、2日間横になって安静にしていたそうです。ここ数日間で痛みが悪化したことから、今もできる限り安静にされているのだと思います。


しかし、「腰痛になったら安静にする」というのは古い常識で、近年は急性腰痛でも適度に身体を動かす方が早く回復し、慢性化や再発の確率が低くなることがわかっています。


当然、強い痛みで動けない時はしょうがないのですが、4日以上の安静臥床はその後の機能障害を残しやすいといわれています。


何より、過度の安静が長期化することによって身体動かすことが怖くなります。

日常の何気ない動作に対しても痛みを予測するようになり、痛みを避けるために動かない。そして動作に対する恐怖が増す。その恐怖に伴うストレス反応によって痛みに過敏になるといった悪循環になってしまいます。


この状況が長引けば身体は衰え、更に活動量は少なくなっていきます。


痛みの新常識

腰痛になっても、通常であれば日に日に症状は軽くなり改善していきます。
それは、風邪を引いても自然に良くなっていくのと同様といえます。


ところが、大竹さんのように痛みが長引いたり、再発をくり返す人がいるわけですが、それには脳の不具合が関係しているといわれています。
腰はそれほど悪くないのに、脳内の痛みの興奮がいつまでも鎮まらず、痛みに過敏になってしまうのです。


その脳のコンディションを作り出すのが、「不安や恐怖」といった感情です。


「何か悪い病気かもしれない」
「治らなかったらどうしよう」
「動かすと悪化するかもしれない」


こういった後ろ向きの考えが不安や恐怖といった感情を作り出し、脳の扁桃体を活動させます。
扁桃体は、痛み、不安、恐怖などに関連する脳の部位で、その活動によって「痛い」という感覚とともに、「どうしよう」「大丈夫かな?」といった精神的苦痛も現れます。

もちろん、椎間板ヘルニア、脊椎分離症、すべり症といった診断も、不安や恐怖の対象になります。


不安、恐怖が増えていった

放送の中では、心配したリスナーさんからの情報が次々と入ってきました。


「それはヘルニアですよ」「坐骨神経痛ですよ」「ヘルニアなら手術が必要です」


など、今はたくさんの情報が瞬時に届くため、非常に便利になりました。

一方で、様々な情報が溢れ、それは知らずしらずのうちに私たちの脳にストレスをかけています。


リスナーの皆さんにも腰痛経験者が多いでしょうから、自身の経験などからのアドバイスなのでしょうが、ネガティブな情報によって人の感情は動きます。大竹さんの不安はどんどん増していったことでしょう。


本番では痛みを感じない

最初の頃は、放送本番で話し始めた大竹さんの痛みは、うその様に軽減しているようでした。


人には、楽しいとき、幸せなとき、気持ちいいとき、あるいは、闘い、極度の緊張状態など、状況に応じて脳内物質が分泌されるシステムがあります。

たとえば、ドーパミン、エンドルフィン、ノルアドレナリンといった物質には鎮痛作用がありますから、これらが分泌されたときには、痛みを感じにくくなります。


大竹さんが、放送本番中に気持ちよく話しをしているなら、脳内の報酬系が働きドーパミンやエンドルフィンが放出され、痛みが軽減していたと考えることができます。

また、話すことに集中している時は腰に注意が向かないため、痛みを忘れることができます。


脳がうまく働かない

本番中は痛みを感じていなかった大竹さんでしたが、14日頃から痛みが悪化し横になったままでの放送になってしまいました。

この時期には、本来備わっている脳の痛みを和らげるシステムがうまく働らかなくなっていたのではないでしょうか。

痛み刺激や不安、恐怖といった感情が長期にわたると、報酬系の働きが低下してしまいます。


正常な脳の働きを取り戻し痛みを減らすために大切なのは、正しい知識を元に身体を動かすこと。

「痛いけど〇〇できた」

という達成感を得ると報酬系が働き、ドーパミンやエンドルフィンの作用によって痛みが軽減してきます。

何よりも、身体を動かして恐怖を克服することができれば、脳は安心し痛みも気にならなくなってきます。
そのためにも恐怖を克服し、痛みのためにできなくなったことが再びできるようになることが最重要です。